私んちの婚約者
先程までの深刻な様子と打って変わって、ぱっと顔を上げて呑気に言う、このオッサン。

「いや料理どころか、魚の取り方(釣竿なし)から火のおこし方、都庁から近所の公民館まで、公共施設の避難経路もまるっとマスターしててさ~!その気になれば、無人島でもコンクリートジャングルでも、いつでもどこでも生きていけそうな、サバイバル術を仕込まれてたの。
五歳児が、三日間でだよ?
猟銃まで撃てるようになってたのを知ったときは、どこの軍隊に入ったのかと思ったよ~」


それは。


いろんな意味で、凄い。
というか、あり得ねぇ。
あるだろ色々、許可とか規制とか現実とか!
おかしいだろ、もうありとあらゆることが!


「それを仕込んだのが、梓の叔父、氷崎甲斐(ヒザキカイ)なんだ」


それは想像できない。
実の叔父が、年端もいかない姪に、何やってるんだ?
というか、その叔父も何者?


「……叔父さんってのは、自衛隊かFBIか、地球防衛軍かなんかですか」

もうどん引きの固い声で聞いた俺に、社長は首を傾げた。良い年して。

「いや?カメラマン。
しかも当時はまだハタチだった」


本気で何者?


俺の脳ではすでに理解不能だ。
……さっきのシリアスを返せ。


いやまてよ、百歩譲って、
「サバゲーマニアとか」

「というか凄く物事を極めたいタイプなんだよね。まあ、彼もその知識を活かして、最近まで海外まわって戦場カメラマンやってた」


……なんだか言葉を発する気力がない。
もうキャパシティを超えた俺の脳をそっとしておいて欲しい。

高宮の関係者は奇人だらけなのか?
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