私んちの婚約者
「やだやだやだ!
ーー愁也ああっ!」
咄嗟に口から出たのは。
一番愛しい人の名前だった。
ポタ、と一筋涙が零れて落ちた。
愁也。
一度口にしてしまえば、あの意地悪な微笑みが脳裏に浮かんで、
私の胸がぎゅうぅっと痛んだ。
こんな時に一番に思い浮かべるのが彼だなんて。
私の愁也病は、もう手遅れなほど進行してる。
会いたいよ。
どうして隣にいないの。
「ばーか。冗談だよ」
不意に私を捕まえていた熱が離れて。
優しい瞳が見下ろしていた。
「幸せそうで、良かった」
その顔は
ちゃんと“叔父さん”だった。
*
その日は泊まるところがないというカイ兄に、身の危険を感じながらも断れず、(正確には断ってんのに無視されたんだけどね!)結局彼をうちに泊めることになった。
「ってことで休ませてもらうわ~」
とカイ兄が言って、勝手に二階に上がったけれど、すぐに不機嫌な顔で戻ってくる。
「客室が、男の部屋になってるんだけど」
あ、愁也の部屋か。
「うん、そこは……ダメ。父の部屋使って」
「もっと嫌。梓の部屋に入れてくれ」
「やなこった!!馬鹿!」
「……るわけねーよな。リビングで寝るわ」
即答した私にちょっぴり寂しそうにして、カイ兄はソファに横になった。
か、可哀想かな、ちょっと。
ーー愁也ああっ!」
咄嗟に口から出たのは。
一番愛しい人の名前だった。
ポタ、と一筋涙が零れて落ちた。
愁也。
一度口にしてしまえば、あの意地悪な微笑みが脳裏に浮かんで、
私の胸がぎゅうぅっと痛んだ。
こんな時に一番に思い浮かべるのが彼だなんて。
私の愁也病は、もう手遅れなほど進行してる。
会いたいよ。
どうして隣にいないの。
「ばーか。冗談だよ」
不意に私を捕まえていた熱が離れて。
優しい瞳が見下ろしていた。
「幸せそうで、良かった」
その顔は
ちゃんと“叔父さん”だった。
*
その日は泊まるところがないというカイ兄に、身の危険を感じながらも断れず、(正確には断ってんのに無視されたんだけどね!)結局彼をうちに泊めることになった。
「ってことで休ませてもらうわ~」
とカイ兄が言って、勝手に二階に上がったけれど、すぐに不機嫌な顔で戻ってくる。
「客室が、男の部屋になってるんだけど」
あ、愁也の部屋か。
「うん、そこは……ダメ。父の部屋使って」
「もっと嫌。梓の部屋に入れてくれ」
「やなこった!!馬鹿!」
「……るわけねーよな。リビングで寝るわ」
即答した私にちょっぴり寂しそうにして、カイ兄はソファに横になった。
か、可哀想かな、ちょっと。