私んちの婚約者
この様子を見てると、カイ兄は私の父と仲悪いのかな。
彼が私の近況を知っているあたり、連絡は取り合ってるみたいだけど。

でも良く考えれば、父からカイ兄の話を聞いたことがない。
いくらカイ兄が忙しくても、今までの15年間会ったことが無いのも、ちょっと不思議だ。


愁也の部屋、彼が来るまでは家具以外何もなかった、物置部屋。
昔は客室だったんだ。確かに愁也が来る前から、ベッドもあった。


それで、ふと思い出す。

愁也、どうしてるかな。マリアとは、話つけられたのかな。


「淋しい、って顔してるな」

愁也のことを考えていた私を、いつの間にかカイ兄が眺めていた。

「イイ男なのか?義兄さんが言うにはデキる男らしいけど?」

私は、憎まれ口を叩く元気も無くなって、素直に頷いた。

「優しい、よ」

俺様だけどね。
ああでもカイ兄を見たあとじゃ、愁也の方が遥かに紳士的かもしれない。

あ、なんだか、逢いたいな……。


「“オンナ”の顔しやがって」

クス、とカイ兄が笑った。

「淋しいなら、慰めてやろうか?」

ソファの上の自分の隣に僅かに空いたスペースをポンポンと叩く。添い寝しろとでもいうつもりか、この歩くワイセツ物め。

「全力でお断りします」


この叔父さんが帰るまで、私、無事で居られるかしら……。
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