私んちの婚約者
帰還、婚約者
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「オハヨー、梓。ハラ減ったー……食うぞ?」

次の日の朝。
低い低い美声と共に、はむ、と私の鼻が何かにかじられた。

痛ってー……え!?

驚愕にばっちり目を覚まして、最初に見えたのは、鋭い瞳。

「うっ、きゃああああっ!!!」

余りのことに、私は涙目で叫ぶ。
私のベッドに覆い被さって、見下ろしていたのは、あの野獣。


「なんで!?わ、私鍵っ……」

寝る前にちゃんと部屋の鍵を掛けた筈!
どうやって入ったんだ!

言葉にならない口をぱくぱくと開けていると、彼はふふんと笑って私の疑問に答える。

「ちょろいよ、あんなん」

カイ兄の手元に針金二本。

「それは犯罪だあああっ!!」

どこまでもアンダーグラウンドで生きてるオッサンだなあ!?

カイ兄はふっと笑って言う。

「俺がルールだ」

「反省せんかああっ!!」

格好つけて言っても、事実は変わらないんだよ!

カイ兄は全くもって罪悪感なにそれ美味しいの的な動じなさで、私を眺める。なんだその視線は。あっちに行け。今の私はライオンの檻の前のウサギ気分。美味しくありませんよ!

「しかし昨日も思ったけど、お前意外と胸でけぇな」

だから、触るなと!!


「このセクハラ親父、朝っぱらから何してくれてんの!?」

「え~やっぱり昨日の夜寂しかったのか?」

やべー、こいつ日本語通じない!!
つうか人外かもしれない!

昨日のデジャヴのように、カイ兄に迫られる私。


『幸せそうで良かった』とかなんか良さげなことを言ってたのは幻だったの!?
ああすっかり騙された!!


「やだやだ嫌だああっ、愁也あ!!」



ふわり、と
甘い香りがした。



「呼んだ?」



目をぎゅうっと瞑った私の耳元に、待ち望んでいた声が聴こえて。
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