僕は君に二度恋をする
悠太の言う“あいつ”は、僕も知ってる彼女のことを言っているのだろう。

それは、僕の脳裏に時々思い出される幼なじみだった女の子……。
10年前、遠くに引っ越すと言って、大粒の涙を流した子。
あの当時、遠くと言っていた場所は、何処だったのだろうか?
今ならそれもわかるだろうけど、僕は知らない。


母さんならもしかしたら知っているのかもしれないけれど……
確か名前は―――


「おーい、どうした?もしかして、あいつが分からないのか?
あんなに、慧にべっとりだったのに。
もしかして、覚えてないのか?佐々野結衣のこと。」

「いや、覚えてる。ゆぅ…だろっ?」


「あぁ、慧はそう呼んでいたっけ。そう。佐々野結衣、あいつ元気かな?」
「さぁ、僕は知らないよ。」
「やりとりしてないの?」
「引っ越し前に会ったきりだよ。」
「ふーん…てっきり、未だにやり取りしてるもんだと思ったけど…。」

「してないよ。何処に引っ越したのかも知らないのに。
それに、悠太が言ったようにあれは恋だったのかもわからないし、好きだったのかもわからないよ。」


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