冬美の初恋
「優勝した3年F組には賞状とトロフィが贈られますので、3年F組のみなさんは壇上の前に集まってください」

「3Fって冬美のお兄ちゃんのクラスじゃない?」

後ろから、こっそり万理が聞いてきた。

「うん。お兄ちゃん総務だから壇上のぼるって昨日はしゃいでた」

万理は小声で〝すごーい〟と言った。



3年F組の人たちはぞろぞろと壇上の前に並び、その中からお兄ちゃんが壇上にのぼり、賞状とトロフィを受け取った。

「山瀬ー!!」

お兄ちゃんの友達が壇上に呼びかけた。

「みんなー!!アリガトゥッ!!」

お兄ちゃんもそれに応えて壇上でロックシンガーのモノマネをして、体育館に笑いが起こった。

もう……コンサート会場じゃないんだから……。

でも、お兄ちゃんのああゆうとこ……


羨ましい……


「みなさん、3年F組のみなさんに、もう一度、大きな拍手をお願いします」

私は拍手をしながら、壇上に並んでいる3年F組の面子を見渡した。

(お兄ちゃんの彼女、いるかな……)




「…………!あっ……」

私は目を見開いた。

その列の中には、例の"雨の君"がいたからだ。
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