冬美の初恋
きみのかこ
「……おろしたから、今はもういない」



雨は私の肩を掴んで、ゆっくり私を見つめた。



「…………それって、いつごろ?」

「去年の……冬」

結構、最近じゃん…………



「何で?妊娠て………避妊しなかったの?」

今まで、経験はないけど……年相応の知識はある。

どんな事をすれば、子供ができてしまうかだって…ちゃんと知ってる。


「………その、中には出さなかったけど………つけてなくて」

「外だし………?」

雨は少し気まずそうに視線をそらして、うなづいた。



答えにくいこと、聞いてるのはわかってる。

でも、聞かずにはいられなかった。



「相手の人は、いま、どうしてるの………?」

「もう連絡とかとってないからわかんないけど、俺の2コ上だから……たぶんもう就職してる…………」



「どこで……知り合ったひと?」

「コンビ二の、バイトしてたときに………」



不思議と、涙は出なかった。

ただ、喉がカラカラで、声が少ししゃがれた感じがした。



何で………なんで、こんな…………?
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