冬美の初恋
1500円も払って、20分も見てない………

「みなみのしまのだいおうは♪」

「そのなもゆかいなカメハメハ♪」

トボトボ歩いていた私の前に、子供連れの夫婦が歌いながら楽しそうに歩いていた。


もし……彼女と雨が子供産みたいって言ったら、今頃……


「…………!」

私はその家族に背中を向けて走った。

もうやだ。

もう済んだ事なのに。

雨は彼女と別れて今は私といるのに。

何で、こんなに苦しいの?!

こんな自分、嫌。

考えたくないよ、こんなこと考えたくない。

ないのに………!



私はコンビ二に立ち寄り、お菓子をたくさん買い込んで、家に帰った。

家に帰ったら、すぐに食べれるだけお菓子を胃につっこんで、制服のままベッドに横になった。

お腹いっぱいにして、すぐに眠りたかったのに……頭はガンガンに冴えて、眠れなかった……。

頭の中を、今日の雨の言葉がずっと支配していた。

何とか他の事を考えようとしても…逃げられない。

雨との初めてのキスの余韻は、どこかへ流れてしまった。
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