冬美の初恋
少し大きめなカラーコーンをせっせと運んでいる雨の姿を見つめた。



「…………」



まばたきするのももったいない、一秒でも多くあの雨を見つめたい。

そんな感覚に陥った。

何だろう、何だか、すごくあったかくて、締め付けられるような気持ちになった。

「あっ」

そうだ……この感じだ……。


思い出した。

ずっと忘れてた。


雨………。


帰りのHRが終わり、掃除を終わらせて、雨のクラスへ走った。

電話とかメールじゃなくて、直接伝えたい。


息を切らせて教室の前に着いたけど、雨の姿はなかった。

帰った……?

「冬美ちゃん」

後ろを向くと、ノリちゃんがいた。

「ノリちゃん、あめ…和久さんてもう帰った?」

「……わかんないけど、どこの掃除だったっけ?」

「…………」

「冬美?」

教室から、お兄ちゃんが顔を出した。

お兄ちゃんに雨のこと聞きにくかったけど……いいや、この際。

「お兄ちゃん、和久さん知らない?」

「……………」

「トイレかな?」

ノリちゃんが聞いても、お兄ちゃんは俯いてる。

やっぱ、聞く相手が間違ってたかも。
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