冬美の初恋
「ごめん、自分で探してみる」

私は回れ右をして走り出した。

「帰ったよ」

お兄ちゃんの声で、私は振り返った。

「え?」

「あいつ今日当番じゃないから、さっさと帰った」

「ありがとう」

今日の晩御飯は、お兄ちゃんの好きなグラタンにしよう。


学校を出た私は、いつも雨と一緒に歩いた道を走った。


もしかしたら、違うルートで帰ってるかもしれないけど…この道しかわからないし。

心臓が苦しい。

「……………!」

反対側の歩道に、雨の歩いている姿が見えた。

「……あめー!!」

聞こえるように大きな声で叫ぶと、2、3秒して雨はこちらを見た。

「あめ…!」

ズッ……


え?


私は、自分の後ろの大きなぬかるみに転げ落ちた。

「…………きゃーー!!」

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