冬美の初恋
………私が、雨のことをすごく好きになったのは、きっとあの瞬間だ。


最初に気になりだしたのは、バイト先でのコトがきっかけだったけど、ノリちゃんに頼んで……体育倉庫の前で待っている雨を見たとき……。


少し大きめのジャージを袖まくりして、カラーコーンを抱えたまま立っている雨を見たとき。

それが妙に、可愛く見えて………。



なんだか、愛しい気持ちになった……。

目を開けると、私の体は泥まみれだった。

どうやら、歩道と田んぼの間の大きな溝に落ちてしまったらしい。

しかもここ連日の雨のせいで泥沼みたいになってる。

いつもは気をつけて歩いているけど、完全に雨に気をとられてた。


そういえば……雨……


「おい」

顔を上げると、歩道から雨がこちらを見ている。


私が転落するとこを見て、反対側から駆けつけてくれたらしい。


「……………」

ていうか、これ……恥ずかしい。

思いきりつっこんだから、下着も泥んこだし。

「立てる?」
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