冬美の初恋
きになるひと
「ただいまー……」

バイトが終わり、玄関に入ると、見知らぬ靴が置いてった。

めずらしい………。

お兄ちゃんも、みやちゃんも、他人を家にいれることはめったにない。

「お兄ちゃん?」

「おかえり」

居間に入ると、お兄ちゃんがキッチンで料理しながら出迎えてくれた。

「誰か、きてるの?」

「おう」

そう言いながら、お兄ちゃんはソファに視線を送った。

「?」

私もその視線の先を見ると、"雨の君"がソファに座っていた。

「冬美、気になるって言ってたから、連れてきた」

「え………」

「好きなんだろ?ホラ」

お兄ちゃんは笑顔で、私の背中を押した。

「…………どうも」

彼は、ぎこちなくだけど、挨拶してくれた。

「………はい」

「………これ」

彼の手には、クリームチョコパンがあった。

「え………?」

「この間、もらっちゃったから」

「あ………ああ…………」

私はそっと彼の手から、パンを受け取った。
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