冬美の初恋
「化粧なんかしなくても充分だって。周りの子がしてるからって、無理に合わせることないんだから」

合わせてるつもりは、ないけど……。

「別に、そんなこと言ってほしいんじゃないの……ただ……」

「ただ?」

「もう、いいじゃん……なんで、化粧しただけで、そんなに言われるの?」

「でも、化粧とか、肌に悪いしさ………あんまり……」

もう……しつこいなぁ……。

「別に、お兄ちゃんの彼女だって、化粧してるでしょ!何か、今日のお兄ちゃんうっとぉしい………」

「………そっか、悪い。俺、出かけるわ」

お兄ちゃんは、すくっと立ち上がった。

「あ、ご飯は?」

「何か食べてくる」

やばい………

「お兄ちゃん、ごめん………」

「あ、てか……元々約束あったし。彼女と。言うの、忘れててごめん」

「そう………気をつけて」

「あいあい」

その日、カップラーメンを作ってお風呂に入ってさっさと寝ようとしたけど、布団に入ってもなかなか眠れない。

お兄ちゃんが私にあんな態度とるの、初めてだ………。

「手紙、書こうかな………メールだと、すぐ読まれるし………」

そうだ。それで、お兄ちゃんの部屋に置いておこう。
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