冬美の初恋
………昨日、寝たの遅かったしな………。

手紙を書こうと決めて、部屋中の便箋をかき集めて、一人でオーディションして、今までで一番きれいな字で書いた。

何度も試行錯誤した。


ブレザーのポケットに手をいれると、昨日一生懸命書いたメモが入っていて、そっとそれをめくった。

"いきなりでごめんなさい。ずっと気になってました。よかったら、メールください。"



でも、渡すタイミングがなー………。


学校に着くと、校庭では体育の授業をやっていた。

私の1年の校舎に行くにはここの校庭を横切らなきゃいけないので、体育しているクラスとかあると、けっこう気まずい。



「よーい……ドン」

先生が旗を振り上げると、男子生徒が5人で走り出した。

あ……あの人、早い。

1番先頭の人を見ていると………

「か……和久……さん」

"雨の君"は、トップで他を大きく引き離して、独走していた。


「冬美ちゃん!」

「え?」

どこからか、私を呼ぶ声がして振り返ると、ジャージ姿のお兄ちゃんの彼女が手を振りながらこっちに向かってきた。
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