冬美の初恋
「はい………一応手紙にごめんて書いておいたけど、読んだかどうか……」

「あ、あめ君」

ノリちゃんの声に、私が顔をあげた。


すると、私の後ろに、"雨の君"が立っていた。

走ってきたのか、息をきらせている。

「あいつらが走り終わったら、女子の前半来いって」

「うん、わかった~」

ノリちゃんは愛想よく了解した。

"雨の君"は私に目もくれず、また走って男子の列へ戻っていった。

「いまのは………?」

私は思わず男子の方の列を指差した。

「いま体育祭のリレー選手決めしててさ。順番に走ってんの」

違う。そうじゃなくて……

「今の人………」

「ああ、あめ君?」

やっと、意思が通じた。

「あめ?」

「和久雨ってゆうの。知り合い?」

「いや、ちがくて………」

あめって……ゆうんだ。

「?」

「あめって………どうゆう字?」

「あの、空から降ってくる雨。変わってるよね………てゆうか~?」


ノリちゃんはニヤニヤしていた。

「い。いや………」
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