冬美の初恋
え………意外。

お兄ちゃんて、彼女にはマメそうなのに………。

「すいません………こんな時になんだけど………ノリちゃん、和久さん倉庫の前に呼んだとき、なんて伝えました?」

「えっと、なんか話したい人がいるから、倉庫の前で待っててって伝えたけど………そういえば、アドレス交換できた?」

「はい、ありがとうございました。あと…………和久さんて、私がお兄ちゃんの妹って………」

「知らないはずだよ。言ってないし。むこうも聞いてこないし」

…………よかった。

「あの、私のワガママなんですけど…できれば、秘密にしておいてほしいんですけど………」

「なんで?知ってた方が親近感わかない?」

「それは…………」

「あ、雨君お帰り?」

ノリちゃんの言葉で振り返ると、鞄を肩にかけて教室から出ていく雨くんがいた。

「………!」



なんか……今朝とは、違うドキドキ。


「ん。俺、当番じゃないし」

「あ、あの。さっきは………ありがとうございました」

私は腰の低い部下のようにぺこぺこ頭を下げた。

「ああ、どうも」

雨くんも軽く会釈してくれた。

「ノリー先生がプリント出せって」
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