冬美の初恋
「今から、いいですか」

「え……?」

私は立ち上がって聞き返した。

「パン………」

その男の人は、店を指した。

「あ、ああ。だ、大丈夫ですよ。残り少ないですけど………」

私はドアを開けてその人を中へ促した。

その人は、パンを選び出し、私は開いた戸棚を拭きながら、その人を観察した。

さっきはしゃがんでたから、すごい大男に見えたけど、立ち上がってみたら、普通の背丈の人だった。

TシャツにGパンというラフな格好で、全身びしょ濡れ……。

雰囲気は、少し大人っぽくて、大学生かな?髪は真っ黒だけど。


「レジ……お願いします」

「あ、はい」

(こんな時間に濡れてパン屋くるなんて………何が食べたいんだろ)


イチゴジャムパンに、チョコロールに、あんぱん………



(甘いものばっか……)



その人は、レジ近くに置いてあるクリームチョコパンに目をつけた。

(そ、それはだめ~)

「これも、いいですか?」

「あ~っ!」


………………。

あっ………

思い切り不満声を上げてしまった。

相手も、少し目を丸くしてる。
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