冬美の初恋
何かただならぬ雰囲気で、ノリちゃんは涙声だ。

二人はまだ私に気づいていない。

私はさっと隣のビルの物陰に隠れ、二人の様子を覗いた。



「なんで……いきなり……」

ノリちゃんの声、震えてる。

「………………」

お兄ちゃんは無表情だ。

「答えてよ………」

「…………なんか、たるくなったし」

「嘘でしょ。夏生、私に嘘ついてる。何か知られたくないことがあるんでしょ!」

ノリちゃんは声を張り上げて言った。

〝嘘〟とゆう言葉が、私の胸を締め付けた。


「私は……夏生が好きだし、別れたくないよ」

何となくは察していたけど、やっぱり別れ話だったんだ。

しかも、お兄ちゃんから………


「ノリは、キレイだし、優しいから………すぐに、新しい男ができるよ」

「………何それ……どうゆう意味よ」

「言ったまんまの意味」

相手を突き放す冷たい言いぐさ。

私の知ってるお兄ちゃんと、全然ちがう…………。

「私は、夏生に思われてるような人間じゃないよ」
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