冬美の初恋
「優しくなんか、ないし…」

ノリちゃんはとても悲しそうに話した。

「ノリは優しいよ」

「…夏生が優しい子が好きって聞いたから、無理して気を遣ってたただけ」

私の目から、涙がでてきた。

ノリちゃん、そんなにお兄ちゃんの事が………。

「じゃあ、これからは無理しなくていい」

「……………………」

「今まで、ありがとな」

「…………どうしても?」

やはりノリちゃんはまだ別れたくないみたい。

「うん」

「可能性はない?想い続けても………だめ?」

「ああ」



ノリちゃんが泣きながら、走ってゆくのが見えた。

私も、その場で泣き出した。



ふと、ケータイのバイブ音が聞こえた。

誰からなのかは、わかっていた。

「………………」

私は静かに応答ボタンを押した。

何か、ノリちゃんの振られるシーンを見たからか、少し気分は落ち着いてた。

ノリちゃんには申し訳ないけど……



「……はい」

『あ………俺』

「………うん」

『今日は………ごめん』

雨くんは、謝らなくていいのに。

「ううん、私こそ…………本当にごめんなさい」
< 60 / 134 >

この作品をシェア

pagetop