冬美の初恋
「お兄ちゃん!」

少し大きな声で呼んでも、反応がない。

多分、最大音量で聞いてるんだろう。

音漏れが聞こえるし。

「もう………」

私はお兄ちゃんの頭からヘッドホンを取り上げた。

「…………!」

不意をつかれて、お兄ちゃんはおどろいた顔で私を見上げた。

「今日は、ごめんなさい………」

「いや………いい、けど」

私はベッドの横に座り込んで、お兄ちゃんと目線を合わせた。

「お兄ちゃん、私ね」



「……和久さんが好き」

「………………」

「私………お兄ちゃんに嘘ついてた………」

「和久さん、私の友達が気に入ってるとか言ってたけど、本当はずっと私が………」

やばい。

さっきあんなに泣いたのに、また涙が…………

「…………そっか」

お兄ちゃんの返事はつれなかった。

「だから、今日のこと、和久さんには何も聞かないで。誘ったのも、好きになったのも、全部私だから」

私はお兄ちゃんに向かって土下座した。

「お願い…………」

「………わかったよ、頭あげて」

お兄ちゃんは私の肩を掴んで、抱きしめた。
< 62 / 134 >

この作品をシェア

pagetop