冬美の初恋
雨くんだって、壇上で見た限りお兄ちゃんには心を許している感じだった。

きっとノリちゃんも、お兄ちゃんのそんなとこに惹かれたんだと思う。

あんなに可愛くて優しい人……。

それをあっさり突き放してしまうお兄ちゃんの冷たさに、私は無性に腹がたった。

「え……と」

ダイキさんはかなり困惑していた。

「こいつ……学校行ってないの?」

私は無言で首を縦にふった。

「その、彼女は……学校きてんの?」

「わかりません………私も、学校行ってないから」

「……なんで?」

「ちょっと……今は………人間関係とか」

あまりつっこまれたくなくて、また言いにくそうにぼかした。

「あー……イジメとか?」

「いや、友達もちゃんといるんですけど………」

"好きな人にふられたショックでいけません"なんて、さすがに言えない。

かと言って"友達がいなくて、イジメられている"と誤解されるのも嫌だった。

「いろいろ事情あるみたいだけど、誰かに金出してもらってるなら、ちゃんと行ったほうがいいよ」

ダイキさんは真っ直ぐな目で私を見つめた。
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