冬美の初恋
ダイキさんが何故高校に通っていないのかはわからない。

でも、通わずに自力で働いている人が言うと重みがあった。

胸が、痛んだ。

学校の学費は、みやちゃんの援助と親の遺産で払っている。


「退学とかには、なりたくないだろ?」

「…………はい」

さすがに……退学は………

きっと惨めだろうし、援助してくれたみやちゃんに申し訳がたたない。

「夏生さ、今、こいつもこいつで色々参ってるんだ。だから、冬美ちゃんに支えてやってほしい」

「…………はい」


そうは返事したものの、今の私には誰かを支える心の余裕なんてなかった。

……でも、さすがにこんな状態のお兄ちゃんを放ってはおけない。

今日は幸いケガで済んだけど、このまま毎晩遊び歩いてたら……。

最近は物騒だし、次はどんなめに合うかわからない。

しかも、他人のダイキさんに迷惑をかけてしまった。

お兄ちゃんの暴走は、嘘をついていた私の責任でもあるし…。

世界にたった二人の兄弟なんだ。

お兄ちゃんは、私が守ってやらなきゃ。

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