冬美の初恋
雨くんの言う"あれ"とは、あの映画を観に行った日の事だろう。

やはり、お兄ちゃんが心配だったらしい。


「ああ……何か、お兄ちゃん、ノリちゃんと別れて、いろいろ参ってるみたい」

遠まわしに、雨くんは気にしなくていいと伝えたかった。

「………俺がケータイ電話しても出なくて」

「……………」

「怒ってるかと」

「いや、それはないと思う。ちゃんと、説明しておいたから」

案の定、気にしていたようで、私は慌ててフォローした。

「そう………」

しばらく、無言で歩き続けた。

「ノリちゃんは………学校、きてます?」

「うん、フツーに来てる」

あんなフラれ方したのに、ちゃんと学校きてるなんて………えらいな、ノリちゃん。

私も、あんな風になれたらな…


いつも渡ってる歩道橋に登り、私は足を止めた。

「……………?」

私がついて来ない事に気づいた雨くんが振り返ると、私は下から雨くんを真っ直ぐに見つめた。





「私、雨くんのこと……好き」

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