冬美の初恋
雨の家に上がるのは初めてだ。

雨の家は団地の5階で、中は少し散らかっていた。

「おじゃまします」

「きたねーけど」

「いや、そんな事ないよ」

家の奥から、雨くんの飼ってる風が出てきた。

風を見るのは、最初の雨の日以来だ。

「あ、風♪覚えてる?」

私が風とじゃれていると、台所から雨の声が聞こえた。

「ウーロンでいい?」

「うん、ありがとう」

「俺の部屋奥だから、先に入ってて」

「わかった♪」

雨に言われた通り、雨の部屋を空けると、中身は結構シンプルだった。

机と、ベッドと、テーブルにテレビ。

部屋の隅には、古いマンガが積み重ねておいてある。

「何もないけど」

振り向くと、雨がコップ二つ抱えて立っていた。

脇には、ポテチをはさんでる。

「あ、ありがと」

「うすしおで平気?」

「うん、大丈夫」

本当はコンソメ派なんだけど………

雨が好きならうすしおでいいや♪

テーブルにポテチを広げて、テレビをつけた。

丁度、バライティの再放送がやっていた。
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