デビル
相反するが故に、お互いは尊敬しあっていた。自分に無いものを持っている人に魅かれるのは人の性だ。

ある日、空は気付いた。格の違いに……。

空は元気ではつらつとしているタイプで、誰とでもすぐに馴染める。

馴染むと言う事は、つまり相手に対等かそれ以下と見られる。要するに空の言動には大した影響力がないのだ。

それに対して文佳は、常に男女の憧れ。言葉の一語一句に、影響力がある。いや、一語一句どころか、あの口から発せられる一音にさえ力がある。


空の言葉は大衆に埋もれ、文佳の言葉は天を突く勢いで人の心を射抜く。

これが嫉妬せずにいられるか?

それでいて『私、空ちゃんしか友達いないから。これからもずっと側に居てね。』何て言う。

その一歩ひいた謙虚さに、嫉妬した自分を攻めずにいられるか?

友達でいさせてもらってるのは、むしろ空のほうだ。


結果、他人から見れば文佳は空だけのモノ。知人全員を敵に回したような生活。

皆に妬まれた。嫌がらせも受けた。始めは持ち前の活気で跳ね返すくらい訳なかったが、気付けば心身共に疲果てていた。

いつの間にか文佳の他に友達もいなくなっていた。挙句の果てには、嫌がらせを受けているところを文佳に助けられる始末。
< 12 / 18 >

この作品をシェア

pagetop