デビル
どんなに喚く奴等も文佳の前では従順な犬同然に大人しくなった。

そして負犬の空は、ご主人様(文佳)に抱かれ暖かい胸の中で泣きじゃくる惨めな飼い犬だった。

「空ちゃんのことは、あたしが守るからね。だから笑って!」


文佳無しでは生きられない。そんな感じ。

あの日、文佳に話しかけなければこうはならなかった。空は自分を恨んだ。それを心の闇にほうり込んだ。

文佳を恨んだ。それも心の闇にほうり込んだ。


文佳を主人公にした物語を書くようになった。もちろん文佳には内緒だし非公開。

これが精一杯の抵抗。

さっき脱稿した作品は、文佳が壊れて自分から彼の元を去るという内容だ。
壊れるというより、自信の中の狂気が目覚めたと言った方が正しいかもしれない。

他にも文佳を空が救うのや、文佳を空が追い詰めるものを書いたりした。
後味が良いと言えば嘘になるが、文佳と自分のハッピーな物語など書ける気がしなかった。
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