追憶の旋律
「よーぉ、おかえり里玖。
みのりん、なんだってー?」
机にだらーんとだらけながら、大して興味もなさそうに将大が声をかけてくる。
「文化祭実行委員を千沙と2人でやれとよ。
どーやら俺らのことを知ってたらしくてな」
「そりゃぁ、いくら先生っていう立場にあっても、お前らわかりやすすぎるしな。
なんせみのりんだし?俺らの担任なわけだしよ」
わかりやすすぎる…か。
俺たちそんなに彼氏彼女っぽいことしてるか?
いや…逆にしなさすぎてる気がするんだが…。
手も繋いだことないし、デートだっていったことない…。
…デート……デート……!!
そういやデートしたことねぇ!!!!
「お、なんだなんだぁ?その顔。
なんか思い出したか?」
「俺たち、デートしたことねぇよ!」
「へー…ってえぇ?!
本当にしたことねぇのか?!1度も?!」
「ない…真面目にない…!」
俺の顔をジロジロと見てから、将大は再び机に突っ伏した。
そして、はぁー…と深いため息をこぼした。
それからまた俺の方を見上げ、ギロリと睨んだ。
「おいおい…さすがにお前、それは千沙が可哀想だろ…。
いくらいつもニコニコしてるからって、きっと密かに待ってるはずだぜ?
まぁ…仲良い俺でもそういう話は聞かないけどよ…。
そーゆーの、我慢しちゃうタイプだろ?千沙は。」
転校してきて、たまたま俺と仲良くなった千沙は同時に俺の幼なじみで大親友の将大とも仲良くなっていた。
学校が終わり、夜になると他愛もない話を毎日メールで会話していると聞いた。
俺もそうだから、別になんとも思わないけど、それくらい千沙と将大は仲がいい。