追憶の旋律
モデルと言うだけあり、一部の男子からの人気はあるんだが…

性格の悪さから「性悪女」とまで言われている。

告白されたことくらいしか、松木との関わりもないから俺は松木がどんな奴なのかは知らないけど…。


「お、おい…人前じゃぁ出そういうのやめてくれって言ってるだろ…」


「えー?じゃあ、人前じゃなければいいんだ?♪」


「あのなぁ…俺は…」


何度言っても、離れようとしない。それどころか、夏だというのに無理やり俺の腕にしがみついてくる。

こんなところ、しょっちゅう千沙に見られてたら…。


「み、実沙ちゃんっ。おはようっ!」


さすがによくは思わなかった千沙が、高身長の俺達の間に入るようにぴょんぴょん跳ねている。


「あー…千沙。あんたいたの。見えなかったわぁ。」


俺の時とは打って変わって態度を変え、じろりと舐めまわすように千沙を睨む。

そしてやっと俺から手をするりと離し、自分の教室へと走って戻っていった。


「千沙…ごめんな?俺もやめろって言ってるんだけど…。それと、千沙のおかげで松木から解放されたよ。ありがとな」


「ううん。私は何も…。分かってるから、気にしないで…ね?」


そう言っていつもの天使のような杏の微笑みを見ると、やっと心が落ち着いた。

ポンポンと頭をなでると、懐いた子犬のようににこにこと微笑んで、軽い足取りで自分の席へと戻っていった。

その姿を安心して見送ると、俺も自分の席へと向かい、荷物を下ろした。

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