愛されオーラに包まれて
俺は横にいた遥香と顔を見合わせた。
まさか…

『越後、君は9月号の校了データをそのまま8月10日に印刷会社に送ったんだよな?』
『それは、お盆で日程がなかったから慌ててたんです。営業局にもう一度チェックを受ける暇もなかったくらいに』
『へぇ、印刷会社へメールした時にはご丁寧に10月号とファイル名を書き換えているのに?』

『…』

局長はその場で立ち上がった。

『そろそろ認めたらどうだ。故意に9月号のデータを校了原稿として印刷会社へ送ったことを』

越後は、静かに俯いた。

『まさか、こんな大事になるなんて…』

声が震えている。

『君が故意にやったと俺は確信をもった時点で、既に部長には話してある。ただ、どうしてこのようなことをやったのかを俺たちに納得できる説明をしてくれ』
『…』

越後は俯いて、黙っている。

『このことは、先ほどの2回目の調査委員会の前の段階で広告局長もご存知だった。しかし、社長や役員のいる前で君を責めるのは、入社1年目の君の将来を潰すと判断し、ことを公にせず、広告局長がうまく穏便に済ませたんだ』

『…』
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