愛されオーラに包まれて
『今、ここにいる中の一番の長は、君の直属ではない俺だし、広告局からは部長だけ。残りは今回の事故に関わった営業局の若手だけだ。君を悪いようにはしない。話してくれないか?』

局長は着席し、諭すような口調で話した。

すると、越後は重い口を開いた。

『…桐生さんに、同情されるかも知れないと思って、やりました』

お、俺に同情される?
何故だ?

『営業局で【きらきら】を担当していると知って、何とか関われないかと考えて…でも、バーコードチェックで印を貰うくらいじゃ、何の進展もない』

越後はハンカチで目頭を拭った。

『それなら、バーコードの情報を変えれば、間違えた私に同情してもらえ、さらに共通の話題で繋がるだろうって、そう思ったんです。まさか、当日桐生さんが休みで、周りの人たちが血相を変えて動くことになるなんて、考えもしませんでした』
『でも君は、自分が間違えたデータを送ることで、営業局員はともかく、まずは桐生が困ることになるかも知れないと考えていたわけだろ?』

『…はい。でもこんな沢山の人が動くことになるなんて…』

局長は、椅子を回転させて立ち上がり、背中側にあるホワイトボードに字を書いた。
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