愛されオーラに包まれて
『その他にも、お母さんがいれば、こんなことも教えてくれただろうな、とかいっぱいあるんだけど、とりあえず年齢だけは大人になってしまった今は、細かいことは全部忘れた』

そう言って笑った遥香が見上げた目線の先には、お母さんの遺影。

遺影のお母さんは、遥香と同じ、猫顔だ。

『これからは、泰河と一緒に思い出を作っていきたいから、応援してね、ってお母さんにお願いしたの』
「俺も、全く同じことをお願いしたよ」

そう。
俺もお願いした。
遥香のお母さんに。

初めましてのご挨拶と、遥香の言うニュアンスの俺達の応援と、それから・・・23年前の今日、遥香をこの世に産んでくれたことに、感謝した。

「ところでさ」

俺はこの家に来た時からひとつの疑問があった。

『なに?』
「この家って、お父さんが一人で暮らしているんだよね」
『そうだけど』
「でも、さっきから、奥で女性の声が聞こえない?」

俺にはお父さんと女性らしき声の会話がはっきり聞こえる。

『え?』

俺達は玄関から仏壇のあるこの和室に直行しているため、リビングにはまだ顔を出していなかった。

『ちょっと、行ってみよう』

おそるおそる、リビングに行ってみる・・・

そこにあるテーブルには、食べきれないほどの料理。
そしてキッチンを見ると、お父さんと、確かに・・・女性がいる。
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