愛されオーラに包まれて
『本当はおせちにしようかと思ったんだけど、遥香はおせちがほとんど食べられないので、やめたよ』

お父さんがそう言って笑う。

案の定、料理は食べきれず。
遥香と二瓶さんが大皿に乗せ換えていた。

『残ったのは夕飯時の酒のつまみだな』

と、お父さんが誰に向けたわけでもなく呟いた。

テーブルもすっかりきれいになったところで、

『2人とも、ちょっと座ってくれないか?』

と、お父さんが俺達をソファーに座るように促す。

お父さんは、二瓶さんと一緒に向かいのソファーに座った。
口火を切ったのはお父さん。

『せっかく、遥香がお付き合いしている方と一緒に帰ってきたわけだから、いい機会だ』

と、お父さんは背筋を伸ばした。

『遥香に、許しを貰いたくて』
『許し?』

遥香は不思議そうに首を横に傾けた。

『お父さん、可南子と結婚しようと思ってるんだ』
『け、結婚?』

遥香は驚いて、自分の声のボリュームをコントロールできていない。

でも、俺は何となく分かった。
さっきから見ていると、年の差、教師と教え子。

その関係を超えた空気をこの2人からは感じたんだ。
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