愛されオーラに包まれて
私は首を横に振った。
後ろからは"おい、桐生行くぞ"と2次会への誘い。

「私に構わず、行ってきてください。大丈夫です。私は子供ではありません」

泰河は後ろを振り向き誘うみんなの方を見て、私を見た。

『気をつけて帰るんだぞ』

泰河の私を掴む腕の力が弱まった。

「すみません」

と、みんながいる手前、泰河にお辞儀をして後輩らしく振る舞った。

一次会の場所から駅までは以外と距離があった。

繁華街を歩いているので物騒ではないけど、徒歩10分の道程がとても遠く感じられた。

そうしてようやく駅に着くと、改札脇の柱に人が寄りかかってこちらを見ていた。

近寄ってみると…

「局長?」
『遅かったね。どこかで道草食ってたの?』

なぜここに、局長がいるのだろう。

「私を待っていたんですか?」
『悪い?』

私を黒くてキラキラした丸い瞳で見つめる局長。
やっぱりカッコいいよね。

…いや、そうじゃなくて。

『高松を心配しているのは、桐生だけじゃないぞ』

"こっちへ来い"と、改札から離れる方向へ歩き出した局長。

"帰る"とも言えず、後ろをついて行く私。

着いた場所は、パーキング。

「え、局長車なんですか?さっき打ち上げで…」
『俺は飲んでないよ』

そうか。
私は自分のことで精一杯で、局長も泰河も、みんなのことも全く見ていなかった。
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