愛されオーラに包まれて
車はどこへ向かっているのだろう。

『打ち上げの最中に、桐生から頼まれた』

局長の車は、大きなバン。7、8人乗りってところ。

泰河の車も大きいけど、多分あれは自分の家族を乗せるためなんだろうと理解できた。
でも局長って、次期社長のお坊ちゃんじゃん。
こんなファミリーカーみたいな車に乗るイメージがない。

局長が言葉を発したのに、車の中をキョロキョロする私。

『この車、変か?』
「い、いえ」

ちょっと挙動不審だったかな。

『高松が途中で帰る素振りか、もしくは一次会で帰る行動を起こし、俺が止められなかったら、捕まえておいてくれませんか?って桐生に言われてね』
「え?」

泰河、局長にそんなこと頼んだの?
上司に頼むようなことじゃないよ…

「申し訳ありません。私は大丈夫ですから」

局長にまで迷惑はかけられない。

『お前、思い詰めてるだろ』

局長は前を向いて静かに話す。

『可愛い部下がそんな状況なのに、放っておくことはできないよ』

局長が柔らかい口調で話す。

『たださ、静かな所で話した方がいいとは思うけど、場所が思い付かなくて。こんなところで申し訳ない』

と、局長が車を停めたのは、古い日本家屋。
質素ながらも高級感はある不思議な建物。
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