愛されオーラに包まれて
「泰河だって見られてたじゃない。女子学生から」
『お前のことを飢えた肉食動物のように見られてたの、分からなかったのか?』
「泰河だって目にハートマーク作った視線を感じなかったの?」
『鈍感女』
「鈍い男!」

すると泰河が"あ!"って言う表情をしたのち、
"シー!"と泡のついた人差し指を口に当てた。

『ここ、壁が薄いから、隣に聞こえちゃう』
「かもね」
『隣はどんな人が住んでるの?』
「私と同じタイミングで社会人になっている男。大学も星恵大みたいだけど、学部が違うのかな。あんまり面識ない」
『ふぅん』

泰河はシャワーで私の体の泡を流しながら、口角を上げた。

『なら、やーめた』
「何が?」

泰河は今度は自分の体を洗い流しながら言う。

『声を抑えてと遥香に言うことを、やーめた』
「どうして?」
『気付けよ、鈍感女』

シャワーから出て、私が簡単に夕飯を作る。

炒め物。
サラダとご飯と味噌汁。

「はい、鈍感女から鈍い男へ、夕食のプレゼントでーす」
< 183 / 345 >

この作品をシェア

pagetop