愛されオーラに包まれて
1学期の終業式当日に、神戸さんに言われたのが"裏切者"。

『あと"嘘つき"とも言われました』

神戸さんの話に合わせて"学歴なんていらない"と言ってきた間柄だったのに、大学進学を高松が決めたから。

『私が、安易だったんです。進路というものを深く考えていなかったのだと思います』

自立"したかった"高松と、"しなければならなかった"神戸さんとでは、そのモチベーションには大差があることは想像に難くない。

神戸さんのお母さんが全く家に居なかった事情は、高松も聞かされていないので、詳しいことは分からないが、ただ、かなり苦労はしている様子は手に取るように分かったそうだ。

俺は高松との話が終わり、高松を会議室から外に出したところで、携帯で電話をかけた。

神戸さんとも話しをしたいと思った俺は、まずは上司であるわかば堂書店営業本部長に許可を取る必要があると考えた。

各方面に段取りを組み、外堀を埋めるようなやり方をするのは神戸さんには悪いけど、少々手荒なやり方の方が本音を引き出せる。

そして、桐生と花村をランチに誘い、高松と神戸さんの話をした。
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