愛されオーラに包まれて
大会に向けた出場選手の選考直前にバイト先から急遽入って欲しいと言われ、断って立場が悪くなることを恐れた神戸さんは、やむ無く部活を休んでバイトを優先した。

部活を休んだのはこれが初めてではなく、同様の理由で何度も部活を休まざるを得なかったことが、結果的に選考に漏れる原因となってしまった。

高松は、他の人とのダブルスで、県大会ベスト4まで行った。

テニス部史上、最高の成績。

『その選考の後、遥香は顧問の先生に楯突くことなくそのまま別の子と組むことを承諾しました。あの時言って欲しかった。"由依じゃないとダメです"と』

神戸さんは立ち上がって、窓の近くに移動した。

『バイトしないと生活できない私と、部活を謳歌できる遥香との差を、まざまざと感じてしまった出来事でした』

"さらに"と、神戸さんは続ける。

『進路で遥香が"私も就職するから、一緒に頑張ろう"って言ってくれたのに、私に黙って大学進学に切り替えてしまって…遥香と私の関係って、そんな薄っぺらいものだったの?と思ったら、猛烈に腹が立って…"大嫌い"と罵声を浴びせてしまいました。遥香とは、それっきりで』

神戸さんは話し終えると、そのまま窓の外を眺めた。
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