愛されオーラに包まれて
シャワールームを出ると、ダイニングテーブルに、トースターで焼きたての食パンと、牛乳が置かれていた。

『今日、何にもなくてさ。でも食べないと、頭痛薬も飲めないしな。さ、食べて』
「すいません…」
『今日、良かったな、土曜日で』

あ、そうか、今日は土曜日か。

「今、何時ですか?」

桐生さんはテーブルに置かれていた自分の携帯を見た。

『9時40分。平日なら完璧遅刻。まぁ、直訪にしちゃえば問題ないけどね』

私も、使える時が来るんだろうか、そのやり方。

それにしても…昨夜あんなことやらかしたのに、どうしてこんな平常心を保てるのかしら、この人。

頭痛薬を飲んだ私は、桐生さんに改めて聞く。

「あの…私は桐生さんと、し、シチャったんでしょうか」

恐る恐る、言葉を選んで。

『そんなの、自分の身体に聞いてみれば、分かることなんじゃねーの?』

桐生さんはそう言うと牛乳をイッキ飲みした。

確かに。
今の私の体。
下腹部に少しだけ鈍い痛みがある。

いや、それ以前に、相手が桐生さんだという意識がないまま、快楽の波に飲まれていた自分のことは、よく覚えてしまっていた。
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