愛されオーラに包まれて
「人間、誰しも何かしらのコンプレックス・・・つまり"感情複合"の要素を持っている。有名なところでは、マザコン、ファザコン、シスコンとか。その3つは別に劣等感でも何でもないだろ?コンプレックスと言うのは、ある物や事に対して、本来無関係な感情と複合されてしまうことを言うんだ」
『何だかさ、本当に授業受けてるみたいじゃない?』

小声で高松が桐生に話したけど、俺には筒抜け。

「じゃ、高松。高松が思う自分のコンプレックスって、何かあるか?」

俺の問いに、高松はしばらく考えた。

『・・・音痴コンプレックス』
「それって、もしかして歌がヘタってことか?」

"アハハハ"とみんなで笑う。

『結構悩んでいるんです。音感もリズム感もなくて、飲みに行ってその後カラオケとかになると、もうそれは憂鬱で』
「でも、そういう小さなことでの悩みが、複合して違う感情として生まれてくる、それがコンプレックスだ」
『俺、さっき局長のおっしゃった"劣等コンプレックス"ですよ』

花村が手を挙げた。

『俺、兄貴がいるんですけど、去年、司法試験に受かって、今弁護士の卵なんです。俺も一応大学は法学部に入ったんですけど、弁護士なんてとても無理で、親戚からは兄弟で随分ちがうと比較されるし、たまったもんじゃないです。だから親戚の集まり、俺は嫌いで行かないです』
< 200 / 345 >

この作品をシェア

pagetop