愛されオーラに包まれて
でも…認めたくない。
好きでもない人に、襲われるなんて。

「私を、襲ったんですね、桐生さん」
『人聞きの悪いことを言うなよ。お前が勝手に"暑い"とか言いながら服を脱いだんじゃねーか』
「それが襲っていいと言う理由にはなりません!」

私の怒りが、沸点に達した。

「大体、女の操を何だと思っているんですか?嫁入り前の女の身体を桐生さんは弄んだんです!」
『お前だって男心分かってねーよ』

私より、桐生さんの方が話し方がゆっくりだ。

『俺だって、24になろうとしている健康な男だ。お前のその姿見て…何も感じないほど、理性は強くないよ』

桐生さんは、冷静だ。

「謝らないんですね、私に」
『謝らないよ。お前は全く嫌がらなかったからな』
「…帰ります、私」

パンが乗っていた皿と、牛乳が入っていたコップをシンクに置いて、玄関に向かった。

『ところで、お前はここがどこだか分かってるの?』

あ、そうだ。
ここは、初めて来た桐生さんのマンションだ。

どうやって帰れば…

「分かってません…」

私の言葉に桐生さんは鼻で笑った。
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