愛されオーラに包まれて
神戸さんはそんなに飲んでいる雰囲気はない。

「お母さん」
『はい』
「ここに来たのは、他でもありません。娘さんの件です」
『はい』
「なぜ、あなたは、由依さんのお父さんと、結婚されなかったのですか？そして、何故由依さんには"お父さんに捨てられた"と、嘘をついたのですか？」

お母さんはしばらく黙っていた。
食器を洗いながら、考えていた。

俺を含む全員が、お母さんからの言葉を待っている。
すると、神戸さんの声が響いた。

『お母さん、教えて、お願い。私、お父さんに捨てられたの？』

実は、俺は斉木の調査により、事実は知っている。
でも、その事実は、お母さんの口から直接娘に伝えて欲しかった。

お母さんは、ゆっくり口を開いた。

『私が、由依の父親と出会ったのは、私が高校2年生の時でした。彼は6歳年上の社会人の駆け出し。たまたま、学校に遅刻しそうになって走っていた私と、彼が出会い頭に衝突して、私が尻もちついて転んだのがきっかけでした』

神戸さんのお父さんとお母さんは程なく恋に落ちた。

しかし、そこにはあまりにも大きな障害があった。
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