愛されオーラに包まれて
『でも、なかなかスムーズにあのご案内はできないよ。お客様も納得してたもん』

と、神戸さん。

「何があったの?」

俺と花村は分からない。

『整理券をなくしてしまった人への対応です』
『そう、本来はダメですよね』

神戸さんが補足する。

あとは、局長が話してくれた。

『"申し訳ございません。他にきちんと整理券をお持ちいただいているお客様の手前、お持ちの整理券番号をたとえご記憶されていても、お並びいただくことは出来かねます。"だったな』

「それだと、普通ですよね」

『でもそのお客さんはレシピ本は持っていたんだよ。だから高松は、"この列の最後尾にお並びにいただくのであれば、他のお客様も納得いただけるかも知れません"と、わざと他のお客様に聞こえるように言うんだよな。ちょっと離れた俺のところにも声が聞こえたから』

遥香は他のお客様の状況を見て、そのお客様を最後尾に並ばせた。

結果、あのようなお礼に繋がったわけだ。

『上司として、誇らしいねぇ』
『本気で言ってますか?部長』
『失礼だな、言ってるよ』

日下部長はそう言うとビールをひと口飲んだ。

『あ、そうだ。4月から新入社員が入ったんですよね。何人ですか?』
「そんなの、はる・・・高松が知っているだろ」

危ない。
日下部長がいるんだった。
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