愛されオーラに包まれて
『あの、私、桐生さんとお近づきになりたいんですけど』
「ふぅん。どんなお近づき?」
『お友達。あと、私のことを"はーちゃん"と呼んでください』
「はぁ?それはできないね」

俺は持っていた白ワイン入りのグラスをひと口飲んだ。

『なぜですか?別に仕事には支障ないと思いますし"私を彼女にしてください"とは言ってないですよぉ』
「ゆくゆくはそうなりたいと思っているんだろ?配属1週間でそんなことばっかり考えていたんだ。まずはここで1人前になることを考えたらどうだ?」
『私、こう見えてモテるんですよ。社内恋愛大歓迎ですぅ』

めげないな、コイツ。

『モテる男は違うねぇ』

隣にいる飯嶋さんも冷やかすし。

「恋愛は1人でするもんじゃねぇだろ。それに、ここはサークル仲間の集まりとは訳が違う。腰掛けでこの会社に入ったようなら、高い倍率の中落とされた他の連中に失礼だ」
『なら、会社で話しかけるだけでもいいですかぁ?』
「まぁ、それならいいけど」

清水のいる部署は販売五部。

文芸本、エッセイ、人文のハードカバーを扱う部署なので、過去に一度だけあった"女性誌の専属モデルがエッセイ本を出版"っていうことがない限り、二部との関わりはほぼない。
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