愛されオーラに包まれて
そう言えば、みなみちゃんのサイン会の前の週の土曜日にわかば堂書店とは別の書店で新刊のミステリー小説の著者による発売記念サイン会が行われると聞いた。

そのスタッフを泰河に頼んでいるの?

『あのさ、俺は二部の人間だし、関係ないと思うんだけど』
『局長がおっしゃってたじゃないですかぁ。"営業局はひとつだ"って』

確かに局長はそう言っていた。でもねぇ…

『そのサイン会の翌週には、白石うららの写真集のサイン会があるんだ。俺はそっちに行くから、他の人当たりなよ』
『でも、人数が足りないんです』
『七部の人間には声を掛けたのかよ』
『…いえ』

七部は文庫本担当なので、何かと五部と絡むことは多い。

『まずはそっちの手配が先だろ』
『だって、頼りにならなさそうなんですもん』

向かいの玲奈さんはそのやりとりをクスクス笑いながら見ている。

『もし、人の手配に行き詰まったようならまずは部長に相談しろ。どうしても俺の手配をしたければ、五部の羽賀部長を通して二部の竹内部長に話を持って行け』
『でも、白石うららの写真集の手配は、自ら手を挙げたんですよね』

確かに。
部長うんぬんの前に、スタッフになることを自ら買って出た泰河。
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