愛されオーラに包まれて
ところが、清水さんが、

『こちらのお願いを何で聞いてもらえないんですか!そんな言い方ないじゃないですか!』

と販売会社の担当者にキレてしまい、交渉決裂。

その販売会社に対して新刊を搬入することができなくなってしまった。

搬入ができないとなると、全体の売上に響く。

『それで羽賀部長の立腹を招いてしまい、清水さんは今現在、営業に行かせてもらえてない状況というわけ』

日下部長はそう言うと、サラダのトマトをフォークで刺して食べた。

「どうしてキレちゃったの?我慢できなかったわけ?」

私も腹が立つことはあるものの、我慢はできる。

『だって、こちらを挑発するようなことを言うんですよ、悔しいじゃないですか。ナメられているみたいで、言葉が見つからなくて・・・』
『ふぅん』

局長はしばらく考えている風だった。

そんな四面楚歌にされた新人は、とりあえず気がある泰河に泣きついたっていうのが、先日のサイン会前の顛末だったわけか。
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