愛されオーラに包まれて
『今度、ウツが結婚式を挙げるんだよ。昨日はその前祝いだった』
「ウツって…秘書室の宇都宮真子(ウツノミヤマコ)さんのこと?」
『そうだよ。ウツの話を聞いていたら、結婚なんてただの契約だと思っていたけど、悪くないかな、って思えてきた』

泰河は私のおでこにキスをした。

『好きになった人の特別になりたいと思ったら、そんな契約もアリなのかな。彼に染まりたくて、ウツのヤツ、先に入籍済ませちゃっているし』

結婚かぁ。

意識したこと、なくはないけど…泰河にはまだその気がないと思っていた。

"社会人として一人前になるまでは"なんてことを言いそうだし。

でも、泰河の真意は一度聞いてみたい。

「それって、私への遠回しなプロポーズと捉えてよろしいのでしょうか?」

私は照れ隠しに敬語を使ってみた。

泰河は"フフ"と鼻で笑い、

『プロポーズの"予約"と言ったところかな』

"それに"と言うと、泰河は私の耳に唇を寄せた。

『こんなベッドの上でそんな大事なこと言いたくないから、もう少し待ってて』

そう言って私の左手を握った。

その手は、とても温かかった。

・・・そのまま、再び眠る泰河。

温かかった手は、単に眠かったのかな。
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