愛されオーラに包まれて
『六部に、2人分の後任の用意ができないんだ。二部のお前の後任には新入社員をあてがい、異動者は一部の山内の後任。四部は補充なしなんだ。お前を兼任で二部に残したのは、新入社員がやるには今のお前の仕事が重すぎるから、経験不足を実務レベルで補ってもらいたいというお願いだ』
「金澤を、慰留できなかったんですか?」
金澤が辞めるなんて、俺は全く聞いていなかったことだ。
『家庭の事情となってしまうと、こちらも引きとめられない』
「そんな・・・」
『それと、高松を秘書室に呼んだのは俺だ。俺の副社長ポストは新設だから秘書も新規。だから誰かを引っ張ってくる必要があったので、異動させることが決定していた高松を指名させてもらった。アイツなら、俺の人となりを分かっているだろうしな。仕事中はお前の奥さん、お借りします』
局長は俺の方を向いて軽く頭を下げた。
遥香の異動は仕方ない。
でも金澤の退職は、引きとめられないものだろうか。
午後、遥香が外出から戻ってくると、局長から同様に説明がされたようだ。
会議室から泣きそうな顔で出てきた遥香。
きっと、金澤のことだろう。
当の金澤を見ると、いつもと変わらない表情でどこかの相手と電話をしている。
金澤の退職が発表されるのは6月に入ってから。
それまでは黙っていろと言われた。
だから遥香もおおっぴらに金澤と話せないので、そのまま自分のデスクに着席していた。
「金澤を、慰留できなかったんですか?」
金澤が辞めるなんて、俺は全く聞いていなかったことだ。
『家庭の事情となってしまうと、こちらも引きとめられない』
「そんな・・・」
『それと、高松を秘書室に呼んだのは俺だ。俺の副社長ポストは新設だから秘書も新規。だから誰かを引っ張ってくる必要があったので、異動させることが決定していた高松を指名させてもらった。アイツなら、俺の人となりを分かっているだろうしな。仕事中はお前の奥さん、お借りします』
局長は俺の方を向いて軽く頭を下げた。
遥香の異動は仕方ない。
でも金澤の退職は、引きとめられないものだろうか。
午後、遥香が外出から戻ってくると、局長から同様に説明がされたようだ。
会議室から泣きそうな顔で出てきた遥香。
きっと、金澤のことだろう。
当の金澤を見ると、いつもと変わらない表情でどこかの相手と電話をしている。
金澤の退職が発表されるのは6月に入ってから。
それまでは黙っていろと言われた。
だから遥香もおおっぴらに金澤と話せないので、そのまま自分のデスクに着席していた。