愛されオーラに包まれて
そして迎えた月曜日。
営業局のフロアに入ると、既に高松はパソコンと格闘していた。

『おはようございます』

平然と言う高松。

「おはよう」

平然を装う俺。

そっと通り過ぎたけど、何とも言えない空気を感じた。

『桐生さん、資料、コピーしておきました』

と、派遣社員の女の子の声。

「朝から、ありがとう」

と月並みな返事。

俺のデスクには、会議資料のコピーがホッチキス止めされて出席者の人数分置かれていた。

今日、10時30分からの、

【料理関連本企画会議】

の資料だ。

定期的に行われるこの会議は、販売二部と六部の部長と担当者、関連編集部が参加する。

と、言うことは…高松も出る。

しかも高松はこの会議には初参加。
多分いきなり新入社員が担当者として単独で参加はしないだろうから、金澤も一緒だろう。

場所は隣の会議室。
すると、3年目の販売一部の飯嶋さんが声を掛けてきた。
歓迎会では一緒に幹事をやった。

小声で

『で、あの後どうなったの。"送り狼"になったの』

楽しそうな飯嶋さん。

「そんな、ちゃんと送り届けましたよ」

俺以上に、高松の名誉を守らなければ。
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