愛されオーラに包まれて
『何だよ、つまんねーの。喰えるチャンスだったのにな。ああ言う男を知っていそうなヤツほど、意外と処女だったりするんだぜ』

飯嶋さんはヒラヒラ手を上げて自分の席に戻っていった。
悪魔だ、デビルだ、あの人。

時間になり、資料を持って会議室へ行くと、

『桐生さん、その資料、私が配ります』

と、高松に言われた。
そんな気遣い、いらねーよ。

頼むから、俺のこと、そっとしておいてくれ。
でも、半ば強引に資料の束を高松に奪われた。

『遥香ちゃん、この会議初参加だね。ファイトだね』

金澤は他人に対して普段はこんな調子。
でも会議に入ると変わるんだよなぁ。

―会議は1時間ちょっとで終了。

やはり金澤の独壇場だけど、金澤は担当が代わってしまったから、次回からは来ない。

大体、この会議があった後のランチは金澤と行く。

営業局での昨年入社の同期は、金澤と俺だけ。

決まって行くのが、居酒屋ランチ。

でも金澤は、定食を一人前食べられない少食なので、食べ残しを俺がいただくのが恒例。
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