愛されオーラに包まれて
それまで目線がうつむきがちだったのが、少し上がった。

『本当は、彼女が大学を卒業してからにしようかと思っていた結婚を、彼女が20歳の誕生日に入籍することに決めたんだ。彼女も、それを承諾してくれた。ただ、彼女には、ちょっとした希望があった』

"つまり、副社長って結婚しているってこと?""それだけでも衝撃なんだけど"など私語でざわついた。

それが静まってから、副社長が続きを話す。

『その希望とは、大学卒業後、社会を見てみたい、ということだった。一見当たり前に出来そうなことなんだが、俺との結婚は家柄上、家庭に入ることを意味する。辛うじて大学は卒業できても、そのままでは社会人になることなく、俺の妻として支えてもらうことだけになる』

成瀬川家に嫁ぐって、何だか面倒かも。
私は泰河で良かったと思って、向かいの泰河を見たら、同じことを考えていたのか目が合ってしまった。

お互い微笑んで、再び副社長の話に集中した。

『俺としては、結婚して彼女を成瀬川家の嫁として縛り付けることになった負い目もあり、彼女の希望を叶えてあげることにした。但し、社会人として働くにあたって、2つだけ条件を出したんだ』

そうだよね。
普通のOLってわけにはいかなさそう。

『ひとつは、その社会人生活は、俺が副社長になるまでの限定であるということ。そしてもうひとつは・・・』
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